言葉には様々な力があります。日本には、古来より言霊(ことだま)という呼び方が存在することはよく知られています。文字通り、言葉には霊力があり、森羅万象あらゆるものに影響を与えると考えられています。日本独特の言語感覚と呼べるかもしれません。では、世界ではどのような感覚があるのでしょうか。

言霊のような概念とは異なりますが、温度の感覚もそのひとつであると私たちは考えます。言葉に力を与えるためには、それに適した温度が存在するのです。この温度が、国やビジネスシーンなどの状況によって異なるのです。つまり、「想い」を伝えるのに最適な温度があるのです。

 例えるなら、日本酒を作る過程で大切な麹造りの作業。徹底した温度管理の中で行われ、温度の違いで出来上がる日本酒の品質が変わると言われるほど重要な工程です。グローバルビジネスにおいて、「想い」を伝えるには正確な言葉を選ぶだけではなく、どのような温度で届けるか……、が鍵となります。そのような「言語の温度調整」も大事な翻訳者の仕事なのです。